まほやく2部完結お疲れさまでした!面白かった~!
各キャラクターごとにつらつら感想を書いていこうと思います。
CONTENTS
オズ
「いつか、おまえが、愛しいものを見つけた時に……。」
「……迷わず……、手を差し伸べて……、抱き寄せることができるように。」
「世界に乱暴をしないでくれ。」
「言葉にすれば間違う」「間違ったものを渡し続けて疲弊していく」のくだりが大好きで、今のオズは言葉に真摯だからこそ言葉少ななのだと感じさせてからの、アーサーへの言葉にぐっっっときました。
この言葉が愛じゃなかったらなにが愛なんだろうと思わせるほどの愛の言葉だった…。
『自身のようになってほしくない』という後悔ごと、アーサーに手を差し伸べられて抱きしめられる日がいつか来ると信じたい。
アーサー
オズが絡んだときの繊細さと、カインといるときの強い光のような側面のギャップが興味深かったです。
傷人格のオーエンがオズに素直に甘えて甘やかされているところを見て嫉妬したことを、そのあとオーエン本人に面と向かって「嫉妬した」と告白するあたり、やっぱりまぶしい人だなあと思う。
でもその一方で世界すべてを愛してくれるような眼差しのアーサーが、迷いなく「世界とオズ様ならオズ様を選ぶ」と言い切るところに、アーサーのアーサーたる所以を感じるというか…。
中央のまぶしい気質と北の情念をあわせもつのがアーサーだと思っているので、それがオズといるときの『危うい…絶対に危うい…』とカインといるときの『アーサーを信じていれば間違いない!』に明暗くっきりあらわれていて、ストレートな善性、光属性だけではないアーサーというキャラクターだけの深みを作り出していると感じました。好きだな~、アーサー。
あとアーサーが寂しさは素直に告白できないところ、いつ見ても胸がギュッとなります。もっと甘えていいんだよ…愛されてるよ…って苦しくなる…。
サンリオコラボを読んだときにヒエッとなって、さらに2周年シナリオでオーエンのことを警戒していたので、ずっとこのふたりの直接対決(?)を心待ちにしていたのですが、予想外にかわいかったです。でもまだこれで全部じゃないだろ…と思ってしまう。
カインとオズをはさんだりはさまなかったりするアーサーとオーエンの関係、もっと見たい!
カイン
なにから書けばいいだろうと思うくらい、色んなことがありました。
夏の陽射しそのものみたいな人が、誰かと自分を比べて、思い詰めていくことがショックでした。カインくんの「強くなりたい」はいつも前向きな響きを含んだものに聞こえてきたけれど、でもそのなかに焦りや切実さ、守れなかったものへの後悔が必ず含まれてきたことをあらためて突きつけられたというか…。
でも賢者の魔法使いたちが魔法舎でともに暮らす提案をしたのはカインくんで、だからこそこの物語があるし、だからこそこれまでの信頼や絆が生まれてきて、その積み重ねこそが今回カインくんを励ましてくれたことが本当に本当に嬉しくて、「こんなに嬉しいことはないだろ」で泣いてしまった。
あなたが一生懸命にやってきたから、どんなときも適当にしなかったからこそ、それはあなたを救ったんですよ…。
みんなからの信頼や、欠片のムルの言葉や、アーサーの言葉や、オーエンの行動。色々なものがカインくんのこれまでを肯定してくれるたびに嬉しかった。たしかにあるものなんだって。
みんな不確かな期待や想像じゃなくて、カインくんのこれまでを見て、そう言ってくれたんだって、大声で言いたくなりました。
「だが、嘘でも、見栄でもなく、俺が見てきた世界はきれいだった。
あいつが見てきた世界には……。
きれいなものはなかったんだろうか?」
あとこのセリフの全てが大好き。カインが自分のこれまでの人生を省みるとき、オーエンのことを思い浮かべるんだ…という驚きもあり、同時刻にアーサーに「世の中は吐き気がするだけ」と言ったオーエンとの見えている世界の違いもあり…噛み締めています。
周囲の人々と世界に愛され守られてきた自覚があるから、自分も同じものを返す生き方がしたいカインくんの根拠のある善性がまぶしくて最高だし、オーエンが見てきた世界は違うのかもと気付くことのできる聡明さも大好き。
カインくんもオーエンもふたりとも自分がされてきたことを鏡のように人々や世界に返しているんだと思って、『人に依る善/悪』という都志見先生の因縁へのコメントを思い出して唸った。まほやく読みたての頃に目にしたコメントだったけど、ようやく理解できた気がします。
カインくんの善性もオーエンの悪性も自身が周囲の人々と世界にされてきたことを映しかえすもの。そのうえで同じなのに対極に存在するふたりが、近付いたり遠ざかったりしながら影響しあい理解しようとする関係を描いているところが好きだ…。
最後に明るい「もっと、もっと、強くなりたい。強くなってみせる!」で結ばれたことが一番嬉しかった。
彼の本質はやっぱりここにあるんだって。こんなに成長の見守り甲斐がある22歳の男の子、いる!?
カインくんはいつもがんばってるよ!大好き!
リケ
2部全体を通してだいぶ落ち着いていた印象が強かったぶん、最後のミチルとの「強くなろう」のやりとりが危うすぎてこれこれこれよ!となりました。
2周年ストーリーでミチルに迫るリケにヒエエ…となったことを忘れていないので…。
傷人格のオーエンと遊んであげていたシーンも微笑ましいやら恐ろしいやらですごくよかったです。
ミスラ
ルチルとミチル以外の仲間のことも案じるような変化を見せはじめて、北の魔法使いのファンとしては嬉しいような寂しいような…。
でもミチルにマナ石を食べさせてしまったあと、彼になにかあれば魔力を失うかもという場面でのルチルとの「少し……。怖いのかも。」「私、何もできませんけど……。傍にいますよ。どんなことがあっても。」「……はは……。本当に役に立たないから笑う。」のやりとりが愛おしかった。
オーエン
ず~~~っと騎士様にかまっては、アドバイスをしたり火種になったりしていたな…。
騎士様のことが大好き(広義)なのはわかった!わかったから!
オーエンがカインくんに抱く感情の一欠片でもカインくんに伝わったら、因縁の関係は変わるのかな…と色々考えてしまった。
だからこそ、カインくんからの興味が向き始めたのがたしかな変化かなと思います。
傷人格のオーエンのかわいさとうわ…感の塩梅がすごく良くて、たくさん見られたけれど、もっと見ていたかった。
カインくんの名前の元ネタ的に兄弟がいたらいけない名前なのに、グレゴリーに兄弟に間違われていたのもうわっっっっっ!!!!!となれました。これからに想像が膨らむ不穏さで良かった。
ブラッドリー
すっかり頼りになる兄貴分としてそれこそ惚れ直していたので、最後の『災厄を迎撃したらフィガロと双子をやる』のくだりでき、き、き、北の魔法使い~!と痺れました。
ミスラは仲間を案じるようになり本質が変化していっている印象ですが、ブラッドリーはどれだけ気のいい兄ちゃんに見えても自身の本質は守っていたんだと感じると同時に、現実を突きつけられたような思いがしました。
終わってみると2部は彼が一番北の魔法使いをやっていた。
スノウ&ホワイト
「怨霊になるぜ」「とっくになっておる」のところ、軽く流して大丈夫!?
全体を通してみるとみんなを見守る安定したポジションではありましたが、スノウとホワイトのすれ違いの種が撒かれていたような気がして、ホワイトはそのうち爆発しそうで…。
ブラッドリーが双子とフィガロを許したわけではないのも(当たり前ですが)、どう転がっていくのだろう…。
ムル
嫉妬心や執着を見せ始めたところでうわっとなったので、最後に欠片のムルを飲んだときに最高にうわっっっとなれました。怖かった。
これまではシャイロックからムルの執着が強調されていたけれど、逆もやっぱり濃い!西!
だいたいのことにはムル(欠片含む)が絡んでいる、というくらい敵としても味方としても大活躍でした。
味方のほうの欠片のムルがすごく好きで、もっともっと一緒にいて色々な話を聞きたかったな…。
シャイロック
植物園でムルに与えた影響を指摘されたときの脆さが意外で良かったです。自覚がなかったのか、目を背けていたのか…。
1部のときも感じたけれど、彼とムルは大人の関係すぎて私にはまだ早い…と感じてしまう。
私は思わず顔を覆った指のあいだからムルとシャイロックの関係を見つめています。
クロエ
いっぱい泣いて、いっぱい考えて、いっぱい頑張った!
幸福しか知らないラスティカに、不幸や悲しみを教えてあげるという発想が美しかったです。
ラスティカが一緒に流星雨を見たときのクロエを思い出したところで、彼のこれまでの想いが報われたような気がして、すごく嬉しかった。
ラスティカ
幸福しか知らなくて、惜しみなく愛を与える彼が、昔も今も悲劇を呼んでしまっていることが苦しい。
大切なはずのものを忘れ続けることを、クロエに止めてもらえて、泣くことができて良かった…。
彼の在り方が影響を与えた人物が今現在もたくさんいるの、ラスティカこそが人を魅了する西の性質の権化なのではと思ってしまいます。本人に自覚も記憶もないのがまた…。
ファウスト
今回ものすごく頑張って、ものすごく前に進んだ人だと思います。
一人称視点がロックンロールの精神で面白かったけれどそれどころではなかった。
どれだけ毒づいても自己否定しても、性根が光で自己犠牲的な性質で、昔も今も人を惹きつけるリーダー気質の人。
後述しますが、フィガロとレノックスとの関係もよかった…。
ネロ
苦労していたな…と思います。本当に。
東の魔法使いたち、とくにファウストとの時間は彼にとって本当に心地いいものであり、同時に信頼を築けてきたんだと感じられただけに、最後ブラッドリーの要請を承諾したのが、なんともいえない。これがしがらみ…。
シノ
頑張ったで賞をあげたい。ファウストの前で弱気を見せるところでギュッとなりましたし、頑なな彼がファウストを信頼していくところを見守ることができて良かった。
いつもボロボロだな…と感じるので、ゆっくり休んでほしい。
ヒースクリフ
シノとの約束の結び直し、決めるところは決めるヒースクリフですごくよかった。そりゃシノも我が君最高って言っちゃうよ。
北の魔法使いのことは怖いけれど、「頼りにしたい」と言ってくれたことも嬉しかった。
フィガロ
いろいろいろいろあったなあ…。
私はフィガロとレノックスのお互い「こいつ…」と思っている空気感が好きなのですが、2部でファウストをはさんでの3人組としてもかわいいな…と思うようになりました。
フィガロがファウストを救うことで過去の自分自身も少しだけ救えたような描き方が良かった。
フィガロはファウストと出会えないけれど、レノックスはファウストと出会える。これまでならそういう運命にフィガロは諦観を抱くだろうけれど、今フィガロはファウストを救うことができた。よかったよ…。
ファウストとまた師弟関係を結べたと思って浮かれているフィガロ、ファウスト側との微妙なすれ違いもあり、ほんと…。
アイザックとのやりとりは私の心に刺さりまくって苦しいほどでした。
「どうすれば、幸せにしてやれたのか……。」
本当にどうすればよかったんだろう。人はどうしたら幸せになれるんだろう。
レノックス
ファウストとの関係、フィガロとの関係、どちらもすごく好きでした。
ファウストとレノックスは主従、フィガロとファウストは師弟、フィガロとレノックスは友人。
レノックスの忠誠がファウストだけのもののように、レノックスのあの気安い物言いはフィガロだけのもの。
それぞれだけの関係と一緒に過ごした時間があって、2人で3人でもちろん1人で…そういう得難い関係性を感じてすごく好きでした。
ルチル
自身はマナ石を食べることを拒否するけれど、落ち着いてからはミチルの意思はちゃんと尊重するし、ミスラがミチルにマナ石を食べさせたときも心配でたまらなかったはずなのに、ミスラを責めることをしなかったのが、本当にルチルという人をあらわしすぎていて…。
チレッタの石を食べることが彼女の価値の証明だというミスラの言い分もわかるし、人間に感覚が近いルチルがそれに強く抵抗を覚えるのも理解できる。
価値観の相違は埋められないけれど、それを縁の断絶にはしたくない、最大限相手のことを尊重しようとするルチルの優しさが沁みました。こう生きたい。
ミチル
今後が怖い魔法使い、ブラッドリーと並んでナンバーワン!
マナ石のくだり、向上心の強すぎる少年性が大好きなので、正直興奮しきりでした。
(みんな、みんな、振り返れ!ボクを見ろ!)のところ、最高!すぎてスタオベしたかった。
この先、ミチルはどちらの呪文を選ぶんだろう。
ミチルがピンチのときに必ず助けに来てくれるブラッドリーが大好きなので、マナ石を食べたときも駆けつけてくれて最高の気分になりました。
アイザック
まほやくで一番共感したキャラクターでした。彼の寂しさが、疲弊が、渇望が、言葉のひとつひとつが、胸に響いて仕方ありませんでした。
第13章第10話『答えの見えない問い』、今思うとこのタイトルがすべてだったな…という思いです。
アイザックがフィガロならわかると思っていた、フィガロにもわからない問い。
「幸せとはなんですか?」
「どうすれば、幸せになれますか?」
「どうして、この世界に生まれてきたんでしょうか?」
「どうすれば、何かいいことがありますか?」
「どうすれば、賢くなれますか?」
答えをあげられる人なんているのかな…。
フィガロとアイザック、北生まれなのに他者と関わろうとする共通点、北の性質が強くうまく関わることができないアイザックに対して一見うまくできているフィガロという相違点。
そして賢いフィガロにとっても愚かなアイザックにとっても、結局幸せはわからないもの遠くにあるもの、という寂寥感を私は『まほやくらしい』と感じるし、そこがとても好きでした。
良いキャラクターだった。私はアイザックのこと忘れません。