※成人向けゲームの感想記事です。未成年の方の閲覧はご遠慮ください。
FANZA GAMESスーパーSALEで『DESIRE 完全版』を購入した。オリジナルはPC-98で1994年に発売された『DESIRE 背徳の螺旋』。今回購入した『完全版』はセガサターン版(1997年発売。18歳以上推奨)をベースに、アダルト要素を復刻しエピローグムービー(後述)を追加した、1998年発売のWindows版。ややこしい。
20年以上前のゲームなので、セール価格なんと500円。2022年のWindows11環境で動くのか?という不安はあったものの、500円なら諦めもつくということで購入。問題なく動作してくれました。
以下感想。
核心のネタバレ込みなので未プレイの方はこんなもの読まずにプレイしてください!!!!!
CONTENTS
本編
アルバート編→マコト編→???編の3視点を順番にクリアしていく構成。シナリオは一本道で分岐もないので、多少面倒ですが総当たりしていれば進みます。
私は『同級生2』のような、この時代のコマンド総当りADVに豊富に仕込まれた『突付くと読める、読まなくてもいい無駄テキスト』が好きで好きでたまらないので、それらを都度回収してクリア時間は15時間くらいでした。
アルバート編を就寝前に少しずつ読んでいたものの、序盤~中盤で読み取った要素から浮かんだ予想との答え合わせをしたい気持ちがどんどん膨らんで、マコト編・???編は真相が知りたい一心で徹夜で読みきった。プレイ中3つほど浮かんだ予想のうち2つがミスリード(おそらく)に引っかかっており、1つが当たりで、作品を楽しんだな~という感じでよかった。
それよりなにより、ラストシーンからBGMそのままにタイトルロゴが映ってスタッフロールが流れ始めたときの絶望感と喪失感がすごすぎて呆然としてしまって、それからこの宙に放り出されたような余韻をこのままもうしばらく味わっていたいと強く思った。
で、数日かけて存分に余韻を味わって今に至るわけですが、運良く2022年の今までネタバレを知ることなくDESIREを遊べてよかったと心から思う。スタッフロールを呆然と見つめながら脳裏に彼女とのこれまでの思い出が次々よぎっていって、ぐちゃぐちゃになれて本当によかった。苦しい。心揺さぶられすぎてシェイクになってしまう。
本編の幼いティーナとの仲良しパートは早く真相を知りたくて読み進めていた身としては正直鬱陶しく感じることもあったし、17歳のティーナとのふたりきりの時間はあまりに唐突で意味不明でやっぱり淡々と読み進めていきがちで。エンディングに辿り着いた瞬間、それらこそがなににも代えがたいほど大切で、帰りたいのに帰れない時間に変貌するのが…やられた…という思いです。そして後々になって心底帰りたいと願うような時間を、そうと知らず無為に消費してきたと気付かされるのは、すごくリアルな喪失体験だな…とも感じた。
自分以外のことはわからないけれど、少なくとも私は苦しくなりたくて(『フィクションのことで苦しむ』という安全な苦しみ方をしたくて)色々な作品に触れている面が確実にあるので、DESIREでできたこの体験には無二の価値がある。
『完全版』追加エピローグ
『完全版』を遊んだからには書いておかなければと強く思ったこと。
全シナリオを読み終わったあとに追加されるムービーは蛇足としか感じられなかった。本編のラストシーンが強く心を揺さぶってくるものだっただけに、4つめのシナリオか真エンディングのような顔をして選択画面に並ばないでほしい。
オマケモードを見る限りこれ以上の隠し要素もなさそうだったので検索したところ、あのムービーはオリジナルのシナリオライターである菅野ひろゆきさんはノータッチで、この完全版から追加されたものと知って安心したし愕然とした。いやオリジナルのシナリオライター以外が追加していい範疇ではないのでは?
悲しいお話として書かれたなら悲しいお話のままでいいと私は常々思っているし、後付けハッピーエンドにするにしても(するな)まさに取ってつけたような雑さだったため理解に苦しむ。いや付け足した意図自体は想像できるけれど、脳が理解も納得も拒むというか…。
一本道・NTR・R18要素etc
一本道でエンディングもひとつだけど、この作品でマルチエンディングはテーマを台無しにするし、アルがサブヒロインと結ばれるエンディングがあったらさすがに受け入れ難かったので一本道でよかった。この物語のあらゆるIFは読んだ人の心の中にだけあればいい…。
NTRは得意ではないけれど、アルとマコトの関係に思い入れさせるような描写がないまま寝取られたのでまったく平気だった。私がNTR不得手なのは愛が性欲に負けることが(私がフィクションに求める)夢がなくて楽しめないからなので、アルとマコトのあいだに負けたら嫌だなと思うほどの愛情を感じなかった。
一方でマルチナがグスタフを愛していたら絶対に傷ついたのでそういうことです。
サブヒロインたちとのエッチシーンはややノルマ感があったものの、クリアしてみると、誰よりもアルを愛しているのにティーナとしては娘のように愛されマルチナとしては年齢差のせいで言い寄られない彼女のことを考えて苦しくなれたので、意味はあったと思う。
真ヒロインが真ヒロインすぎる…好きだ…。
総評
クリア後数日して、物語の構造を理解するために紙に図として書き出してみたら、説明されていないところや都合がよすぎる装置などわりと突っ込みどころは多く、それらを終盤の盛り上がりで押し切ったのだと感じたけれど、そんなことはマルチナの最後の届かない告白の前ではどうでもいいことなんですよね。
「ああ、アル。あなたが初めてデザイアへ来たとき、涙がこみあげてきた。もう一度会えて、嬉しかったのよ。
あなたのためだけに、あなたとの出会いだけを心の支えに、私は生きてきた。
そして、この永遠ともいえる時間の流れから、逃れるために…。私がティーナだと、あなたに言いたかった。私がティーナだと、あなたに知ってほしかった。
愛していると言いたかった。言ってほしかった。
あなたに、抱いてほしかった。抱きしめたかった。アル!私は、ティーナよ!あなたの、ティーナなのよ…。
アル、私は…。アル、私は…!」
この愛に、私(プレイヤー)は見ているだけでなにもできないことがもどかしくて悔しくて悲しい。この感情が私にとってのDESIREのすべてなので…。
DESIRE、プレイしてよかった。ずっと私の心の傷のひとつでいてください。
EVEとYU-NOも購入済なのでしばらく時間を置いてから遊びます。