ウマ娘/アストンマーチャン育成シナリオ感想

本能がひけと命じてきて逆らえなかった。

実装前からなにかと話題だったアストンマーチャン。基本的に印象を裏切らないシナリオになっていました。

幼少の頃から病院で関わった人たちの死を経験してきたマーチャンは独自の死生観を持っており、死自体よりも自身が忘れられることのほうを恐れ、世界に自分が生きた爪痕を残すことを強く望んでいます。
ですがマーチャンの、自分という存在が世界や人々の記憶に残ることでずっと存在し続けられる…という話は単なる精神論ではないようでした。不可思議な現象により人々の心からマーチャンが忘れられていくにつれて、彼女の存在自体が不安定になってしまいます。
しかし、マーチャンとの思い出を必死に忘れまいとするトレーナーとマーチャン自身が向き合うことで、本来ならこの先はないはずだった彼女の存在は世界に繋ぎ止められます。マーチャンにとって絶対的な人生観であった『船は1人乗り。速さも長さも深さも違うから、隣には居続けられない』に変化が生まれた瞬間でもありました。

育成シナリオの序盤~山場までは大体こんな感じで、それこそ実装前から言われていたように少し前の美少女ゲームチックな雰囲気がありました。
私も「なるほどなるほどやっぱりこんな感じか~」と読み進めていたのですが、エンディングで急にアストンマーチャンが私に話しかけてきたので、びっくりしてしっちゃかめっちゃかになって今この感想文を書いています。
というわけで私が感想を書きたいのはエンディングについてです。
 

それまではマーチャンと彼女のトレーナーの話をしていたのに、エンディングのマーチャンは明らかに私(画面の前にいるプレイヤー)に話しかけてきていました。メタ以外のなにものでもないのですが、先に挙げたようにウマ娘のアストンマーチャンのシナリオは中盤以降史実とは違うIFルートに入り、ハッピーな感じに進んできました。それが突然マーチャン本人に優しく背中を押されて夢から覚めるのがエンディングです。

びっっっくりして、びっくりしてからこんなトゥルーエンドある!?とめちゃくちゃに心揺さぶられました。あまりにもウマ娘の描きたいことが詰まっていて、あまりにもトゥルーエンドで…?すご…!?
 

こんな、これはエンディングだと、プレイヤーは物語を読み終わって現実に帰るのだと、必ず年をとって、いつかウマ娘どころかゲーム、競馬といった現在の趣味から離れることもあるかもしれないと、すべて理解した上でのメッセージ、ずるいだろうが!!!!!!!!!!!
でもこの直談判をしても許されるどころか、「やられた…」となるのがここまで描かれてきたウマ娘のアストンマーチャンなんですよね…。

引き出し、タイムスリップと並べられたらドラえもんがよぎりますし、マーチャンのシナリオはそれこそ不思議で奇跡で夢のようだったけれど、このくだりは唐突に感じるほど現実的でとてもロジカルな願いで、最初から一貫して描かれてきた『忘れられたくない。覚えていてほしい』の着地点でもあり。本当にこのエンディングがなければ、綺麗な話だったねで終わりなのにずるい…。

トレーナーのセリフを一択の選択肢扱いとしてプレイヤーがわざわざタップしなければならない、普段は手間なだけの仕様がとんでもなく重くてそこも良かった。今この瞬間のためにこの仕様はあったのかも…そうかな…。

マーチャンがずっと売り込んでいた『マーちゃん人形』は作中では商品化が叶い、エンディングではアジアにまで出荷されています。しかし現実にマーちゃん人形は存在しません。アイドルホース(競走馬のぬいぐるみ)にはG1競争2勝以上、もしくはダービーや有馬記念での勝利、オーディション(人気投票)上位といった条件があるためです(アストンマーチャンはG1競争1勝)

「いつかマーちゃん人形がいらなくなったらどうするか?」と尋ねられたトレーナーは「丁寧にきれいにして、なくさないように、どこかに入れておくだろう」と返し、マーチャンはそれに満足したようでした。これが答えなんだろうな…。
私のところにマーちゃん人形はないので、思い出だけですが…大切にしまっておくこと、たまに思い出すこと、それを語ることが、いつか本当にマーちゃん人形と会えるかもしれない方法でもあります。なんせプレイヤーはみんな、マーチャンと約束してしまいましたから。
 

すごい…ウマ娘だったな…という感想でした。製作陣のモチーフへの描きたいこと叶ってほしい夢が、シナリオを通して読み手のこちらが目をまわしそうな勢いで溢れてくる、この感じこそが私の好きなウマ娘なので大大大満足です。
ウマ娘で号泣したのはアニメ2期のライスシャワーとキングヘイローの菊花賞でしたが、アストンマーチャンのエンディングも同じくらい泣いた。泣いて、それからこの思い出をどこか残るところに書き残さねばならないと強く思ったので、ツイートだけでなくこの記事も書きました。好きだ、ウマ娘…。